石炭火力発電の新設は温暖化ガス削減目標にそぐわない
山口県宇部市で、進んでいる大型石炭火力発電所に環境省が待ったを。望月義夫環境省は、環境政策の観点から認めない方針。
大阪ガス・電源開発(Jパワー)・宇部興産が出資する山口宇部パワーが計画している最新鋭の大型石炭火力発電所は、総出力120万キロワットの最新鋭設備。しかし、石炭火力のデメリットである二酸化炭素(CO2)の排出量が多いため2030年の電源構成と温暖化ガスの削減目標の観点から、石炭火力の見直しを進めることに。
環境省は石炭火力に異議申し立て
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2030年の電源構成では、石炭火力を2013年度の30%から約26%に引き下げたい意向。石炭は安価で資源量も豊富。ただし、液化天然ガスに比べてCO2の排出量が約2倍という欠点を持つ。その点、温暖化ガス削減目標を達成するためには、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーに力を入れたい状態。もっとも再生可能エネルギーの中では、設置しやすいメリットを持つ太陽光発電の比率が高すぎるという点も。
大型石炭火力発電所の設置計画
- 山口県宇部市の西沖の山発電所:120万キロワット(山口宇部パワー)
- 島根県浜田市の三隅発電所2号機:100万キロワット(中国電力)
- 千葉県袖ケ浦市の千葉袖ヶ浦火力発電所:200万キロワット(千葉袖ヶ浦エナジー)
- 愛知県武豊町の武豊火力発電所:107万キロワット(中部電力)
- 愛媛県西条市の西条発電所1号機:50万キロワット(四国電力)
データ:日経新聞より
環境省は、既存の石炭火力を維持したまま、これらを新設すると目標が守れないと判断。環境アセスメント法に基づき、環境省が経産省に意見提出することになる。
2011 年度の石炭火力の発電電力量(10 電力計(受電を含む))は、2,388 億kWhで、1973 年度くらべて、なんと約14 倍へと増えています(下図のオレンジが石炭)。2011年度においては、日本の発電電力量の25%を占めています(2011年度)。また、東日本大震災後は、原発停止後の代替電源として、利用が増えています。石炭jp
震災で、原子力発電が停止したことから、代替電源として石炭火力の発電量は増加傾向。石炭jp様によると合計で94基存在。
メガソーラーの設備に比べて火力発電所を稼働させるのは時間も費用もかかります。石炭火力は計画から稼働まで約10年、メガソーラーは一年。そして、一旦、稼働させれば、そう簡単には止められません。
また2015年6月12日まで、ドイツのボンで開かれていた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)の準備会合において、日本の石炭への過度な依存を懸念する声も上がっていた。ポスト京都議定書として、2015年末にパリで開かれる本会議前の準備だが、日本の新目標を不適切と酷評される場面も。
安倍首相のG7サミットでの宣言:温暖化ガスを2030年までに2013年比26%削減
安倍晋三首相は、ドイツで6月7、8の両日に開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、温暖化ガスの排出を2030年度までに2013年度比で26%削減するという目標をお披露目したはずだ。週刊現代
脱原発を標榜しているドイツでは、太陽光発電が弱い地域性のため(日照量不足)、再生可能エネルギーの中では風力への依存が強い。そして、2030年のドイツ電源構成では、石炭・褐炭あわせて38%と石炭火力への依存度が強いことも記憶しておきたい。
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