欧州大寒波時に脱原発を掲げたドイツの電力不足はどうなったか?
太陽光発電や風力は、寒波や暑い夏などのイレギュラーに弱いデメリットがあります。福島原発事故で脱原発を推し進めたドイツを襲った寒波の影響をドイツ在住の川口マーン恵美さんが、著書「住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち」に書いています。
国民に脱原発・環境保護意識が強い。ドイツは原発を廃止して、太陽光発電や風力を中心にエネルギー政策を切り替えています。もちろん、稼働してこそ出てくるメリットやデメリットもたくさん。
2012年2月にドイツを襲った大寒波によるドイツの電力事情
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停電になれば、ドイツは壊滅すると電力会社は予想を発表。連日マイナス10℃の氷点下が続き、電力供給が不安視されていた。
結局、大寒波の時期は、北ドイツで風が吹き、冬にも関わらず太陽も照ったため、深刻な電力不足には陥らず。足りなくなったのはロシアから供給されるはずの天然ガス。ロシアが寒かったために、自国消費が増えてドイツに供給できず。
川口マーン恵美さんによると、ドイツの電気代は、フランスのほぼ2倍。その理由は再生可能エネルギーの助成金。一方で、イレギュラー時に弱いデメリットに関しては、何とか乗り切ったことが分かります。
ドイツで行った電力不足対策
- ニュルンベルクの発電所は、天然ガスから石油発電に切り替え:経費は通常の約3倍
- オーストリアから購入:停止中の火力発電所を稼働させてピーク時は700メガワットを送電
- 豊富に存在する石炭・褐炭による発電
ドイツは、日照が少なく太陽光発電に期待できない分、風力発電の割合が多い。また、環境保護の観点からは良くないことながら石炭資源が豊富にあることが電力事情からのメリット。
太陽光発電がドイツの電力不足を救った。
再生可能エネルギーもこの寒波で確かに一役買った。特に太陽光発電は需要が大きい昼の12時を中心に毎日合計約8000MW程度の電力を生産、その多くをフランスへの輸出に廻すことが出来た。しかし南フランスでは、例年通り大量の電力がドイツから輸入されなかったので、ブラックアウト警報が発され、送電網運営会社RTEは、家電の使用を自重するよう住民に呼びかけたという。風力発電は風が弱く1000MW程度しか貢献できなかたようだ。みどりの1kw
電力不足に陥ったフランス
一方、原子力発電大国のフランスは、同時期に深刻な電力不足に。
2012年2月8日、電力消費量はピークとなり、フランス政府は節電をアピール。そして、隣国経ちは、フランスに高価格で電気を売りつけることができて大儲け。ドイツの電力会社もフランスに電気を販売したとのこと。
原子力発電は経済効率が良い。価格が安いとのメリットを電力会社や政府機関が宣伝することは多い。ところが、こういった実例を見ると本当はどうなのか?と思いたくなりますね。
日本で経済産業省が公表した2030年の電源構成でも原子力発電の発電コストは10.1円とエネルギー源の中で最安値。ただし、万一事故が起きた時の負担は、天文学的数字で採算に合わないことはチェルノブイリ・福島の両原発で実証済みのはず。
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