ロイヤル・ダッチ・シェル(石油メジャー)のシナリオプランニング
石油メジャーの一つ。セブンシスターズとして石油業界に君臨したロイヤル・ダッチ・シェル社は、「シナリオ・プランニング」というエネルギーの長期ビジョンを作成。
ほぼ5年ごとに全世界の動向とエネルギー事情を対象にシナリオ作りを行い、2013年に新シナリオを発表。
2013年10月28日:新しいシェル・グローバルシナリオ「New Lens Scenarios」のシンポジウムを開催。太陽光発電を含む再生可能エネルギーの未来について言及されている。
「New Lens Scenarios」は、二本のシナリオで構成
異なった二本の予測では、太陽光発電の普及度が大きく異なる。元三井石油の岩瀬昇氏・雑誌wiredの記事を参考にまとめてみました。
ロイヤル・ダッチ・シェルの関係会社である昭和シェル石油は、従来より太陽光発電に力を入れており、2006年に設立した昭和シェルはソーラーフロンティアと名前を変えて業界のリーディングカンパニーに成長。太陽光発電はクリーンさというメリットを持ちながら広い土地・価格というデメリットがある。長所を生かしながらの普及を望みたい。
「Mountains」シナリオ
国家の役割を重視した既得権益重視。保守的に世界を統治していくスタイル。台頭する中国そして米国との関係で利益調整が行われるシナリオ。石炭・石油から排出されるCO2問題の解決に向けて大プロジェクトが動く。
成長が緩やかな「Mountains」シナリオでは、エネルギー価格は安い。とりわけシェールガスが、供給の安定した安価なエネルギー源として世界の需要を支える。各国政府の指導力が強いこの世界では、長期的な視野に立った大規模エネルギー・地球環境プロジェクトを遂行していくことができる。鍵となるテクノロジーとして強調されるのが、炭素隔離(CCS)技術だ。火力発電所などから大量に排出される二酸化炭素を数千年オーダーで地中や海中奥深くに貯留する技術の実現は、「Mountains」シナリオにおいては二酸化炭素問題の解決に欠かせない技術と位置づけられ、その開発と運用には先進国を中心とした国際協調が実現する。wired
政府規制が強く経済成長は弱い。シェール革命が北米だけでなく世界中に広がる。CCS(二酸化炭素回収貯留技術)が進化し重要なカギを握ることを予測。
CCSは、工場や発電所などから発生するCO2を大気放散する前に回収し、地中貯留に適した地層まで運び、長期間にわたり安定的に貯留する技術です。CO2の早期大規模削減が期待できる地球温暖化対策の切り札なのです。
CO2を貯留する場所は、地表から1,000m以上の深さにある一層の貯留層(帯水層等と呼ばれる)です。CO2が漏れ出すことのないよう、上部を遮へい層と呼ばれるCO2を通さない泥岩などの層で厚く覆われていることが必要です。
「Oceans」シナリオ
こちらは政府規制が弱いシナリオ。市民社会・NGO・企業といった集団がバラバラに意見を主張する。革新的なアイデアが経済成長を刺激し、エネルギー需要や価格は上昇傾向。
政府介入が少なくシェール革命は進まない。21世紀半ばに太陽光発電が普及し始めるが、原発やCCS・集団移住といった政府の強制力が必要な大規模な事象は起きにくい。
CO2排出量は大幅に増加する。
太陽光発電の未来
「Oceans」シナリオでは、太陽光発電が2060年には石炭や石油並のメインエネルギーとして活用されている。
ただし、エネルギー全体を再生可能エネルギーだけで賄うのは双方とも難しいと予測。
- 地理的問題
- 太陽光・風力では発電のために、広大な土地が必要というデメリットがある。しかし、需要の多い地域の傍に広大な土地が無い。
- 使用分野の問題
- 再生可能エネルギーは、発電用が多い。電力以外のエネルギーが必要な化学・輸送・鉄鋼などに太陽光発電は利用できない
- コスト競争力
- 石油や石炭に比べて再生可能エネルギーは全体的にコストが高い。
New Lens Scenarios:ロイヤル・ダッチ・シェル特設サイト(英文)
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